相続放棄をした場合、他の相続人への通知は必要か
1 相続放棄は単独でできます
相続放棄の手続きは、単独で、家庭裁判所に申述することにより行うことができます。
つまり、他の相続人の意思と関係なく一人でできます。
2 相続放棄したことを他の相続人へ通知する義務があるのか?
相続放棄の手続きがなされたことは、家庭裁判所から他の相続人へ通知が行くことがありません。
また、相続放棄をした旨を他の相続人へ通知する義務は法的にはありません。
3 通知した方がいいのか
⑴ 通知しなかった場合トラブルになることも
相続放棄を行った場合で、同順位の相続人がいる場合(その相続人が相続放棄していない場合)、放棄した財産は、他の相続人に分配されることとなります。
同順位の相続人がいない場合、後順位の人が相続人になります。
ただ、この後順位の相続人は、先順位の相続人が相続放棄したことの通知を受けていなければ、自分が相続人になったことを知りません。
被相続人に借金があった場合、この後順位の相続人は、突然債権者から督促が来て初めて自身が相続人になったことを知ります。
この後順位の相続人が3か月以内に相続放棄の手続きを行えばよいのですが、「自分は相続人ではないし、何かの間違いであろう」などと仮に考えてしまったとすれば、相続放棄の機会を失い、借金を背負うことになりかねません。
そうすると、「なぜ相続放棄したことを知らせてくれなかったのか!」などと親族間でトラブルになることあります。
そのため、法的な通知義務はありまえんが、通知した方が良いのではないでしょうか。
⑵ 相続放棄しても管理義務は残ります
相続放棄をすれば、被相続人の財産とは全くの無関係でいい、とは限りません。
民法940条は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定めています。
つまり、相続放棄によって相続人となった人が管理を始めるまでは、財産の管理義務が残ると言うことです。
もし、その人が管理を始めるまでの間に、管理義務を怠り周囲に損害を与えてしまった場合、損害賠償請求をされる可能性がないわけではありません。
管理が面倒といって処分してしまうと、単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなることもあります。
そこで、管理しなければならない財産がある場合には、早めに次の相続人に管理してもらうためにも、早めに通知した方が良いでしょう。